近視の進行を抑制することが大切な理由
子どもの近視は、主に眼球が楕円形に伸びてしまう(眼軸長が伸びる)ことで、ピント位置がずれることにより生じるケースが多くあります。
近くを見ることが習慣化してしまうと近視になりやすく、一度眼軸長が伸びてしまうと戻ることがありません。そのために眼軸長の伸びを抑えることが、近視の進行を抑制するためには重要となります。

低濃度アトロピンによる近視抑制治療について
低濃度アトロピンは、近視進行の抑制(眼軸長の進展抑制)において、統計的にも臨床的にも効果が認められている唯一の治療法です。
アトロピン1%点眼薬は1960年から近視治療に使用されていますが、以下のような副作用が知られています。
- 瞳孔が開いたままになるため、まぶしさや強い光に対する不快感・目の痛み
- 近くを見るための調節機能が低下し、読書や書き物など近距離作業が困難になる
- アレルギー性結膜炎や皮膚炎
これらに対し、超低濃度のアトロピンを使用することで、近視進行を効果的に抑制しつつ、従来の1%アトロピン点眼薬に見られる不快な副作用を回避できることがわかってきました。
2025年5月現在、当院ではシンガポールEye-Lens社製のマイオピン(0.01%・0.025%)および日本国内製のリジュセアミニ0.025%点眼液を取り扱っております。
報告によれば、0.025%アトロピン点眼により、点眼しない場合と比べ2年間で約38%の進行抑制効果が得られるとされています。
適応・治療対象
- 屈折異常:検査により近視が認められたお子様
- 年齢:18歳以下
保険適用について
低濃度アトロピンによる治療および関連検査は、すべて保険外診療(自費診療)となります。
治療に伴う副作用・リスク
- 瞳孔がわずかに開くため、約10%の方が日中のまぶしさを感じることがあります。
- 特に0.025%アトロピンでは、手元が見えにくくなることがあり、1%使用時ほどではないものの、症状が強い場合は継続が困難な場合もあります。
- 夕方に点眼することで症状が緩和する場合があります。
- 点眼を中止すれば、1週間程度で症状は改善します。
治療スケジュール
保険診療(適応検査)
- 視力検査
- 必要に応じて調節麻痺検査、精密眼底検査
保険外診療(自費診療)
適応が認められた場合、低濃度アトロピン治療に関する説明と同意書の取得後、治療を開始します。通常は0.01%マイオピンから始めますが、症例によっては0.025%アトロピンの使用をお勧めすることもあります。
0.025%アトロピン点眼を推奨するケース
- 近視進行が速い
- 5~7歳と低年齢で近視が進行している
- 両親に強度近視の既往がある場合
治療後の診療スケジュール(すべて保険外診療)
- 1か月後:副作用や異常の有無を確認
- 以降3〜4か月ごと:診察を行い、近視進行の程度を測定
- 1年経過後:眼底検査を実施し、網膜の状態を確認
注意事項
- 治療中の眼鏡・コンタクトレンズ処方はすべて保険外診療となります。希望される場合は、事前に処方予約をお願いします。
- 処方済み薬剤の返品・返金はできません。
- 診察なしで薬剤のみを購入することはできません。
- 効果を得るには、最低でも2年以上の継続が推奨されています。
- 治療中止後のリバウンド(再進行)は、最新のLAMP studyによれば0.01%・0.025%いずれも強くないとされていますが、自己判断で中止しないようご注意ください。
点眼方法
- 就寝前に両眼それぞれ1滴
- 1か月に1本使用
- コンタクトレンズは外してから点眼
- 点眼前に手を石けんでよく洗浄
- まつ毛やまぶたにボトル先端を触れさせない(雑菌繁殖防止)
- 兄弟姉妹での使い回しは避ける(感染防止)
費用(税込)
内容 | 費用 |
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初回(視力・眼底検査等) | 保険診療 |
2回目(説明・同意書取得) | 450円+点眼費用 (※保護者のみの来院も可。ただし、初回検査から3か月を経過している場合は再度検査が必要です) |
3回目(点眼開始1か月後診察) | 3,300円+点眼費用 |
4回目以降(3~4か月ごとの診察) | 3,300円+点眼費用 |
1年後(眼底検査) | 3,800円+点眼費用 |
点眼薬費用(税込)
薬剤名 | 価格 |
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0.01% マイオピン | 3,850円 |
0.025% マイオピン* | 4,400円 |
※マイオピン0.025%は、リジュセアミニ0.025%に順次変更予定です。
※価格は予告なく変更となる場合がございます。詳細は受付にてご確認ください。